|座 談 会
  ㈱印刷出版研究所『印刷新報』(9月26日付 第4731号)
   全日本光沢化工紙全国大会特集
    座談会 後加工専門集団の真価発揮
    「令和」新時代へ挑戦 より抜粋

全日本光沢化工紙協同組合連合会(鶴田和也会長)は9 月27 日、三重県・長島温泉「ホテル花水木」で第44回全国大会を開く。Web 全盛で印刷・紙メディアを取り巻く環境は厳しさを増す中、印刷物の付加価値を高める特殊加工の役割が注目されている。座談会では全日本光沢化工紙協同組合連合会・関東特殊加工協同組合の役員に、全国大会への抱負とともに、関東特殊加工の活動や光沢、箔押、スクリーン印刷、抜きなどを手がける各社の立場から特殊加工業界の展望について聞いた。

●出席者●
 全日本光沢化工紙協同組合連合会・関東特殊加工協同組合
  会長・理事長 鶴田和也(宏和樹脂工業) 副会長・副理事長 堀 知文(丸栄)
  副会長・副理事長 小原 隆(大和紙工業) 専務理事 𠮷田純一(𠮷田製作所)
  理事 木村 亨(旭紙化工) 理事 長谷川広重(日本樹脂工業)
  ※敬称略

~より密接な連合体制構築へ~

■光沢加工、特殊加工業界を取り巻く環境は大きく変わってきています。そうした中、第44 回全国大会が開かれます。大会開催に当たっての抱負をお聞かせください。

鶴田 光沢加工をはじめとする特殊加工を取り巻く経営環境はますます厳しさを増している。
 関東特殊加工協同組合は2017 年7 月に箔押業界と合流し、光沢加工の枠にとらわれることなく、印刷物の付加価値を高める印刷物の後加工全般の技術を担う団体へと生まれ変わった。
 個々の会社が盛り上がらなければ、組合の活動が盛り上がるわけがない。そのため、この2 年余りは組合員同士が情報交換を活発にし、できれば仕事のやり取りにまでつながればとの思いから、まずは組合員にいかに活動に参加してもらうかに終始してやってきた。
 新年会や総会では落語やマジックショーなどの余興を取り入れたり、屋形船でのイベントやボーリング大会を催したりするなど、経営者だけでなく従業員にも参加してもらうことで、組合員同士の親睦を深めることに努めてきた。少しずつではあるが、その成果が表れてきている。
 地方では、光沢や箔押抜きなどを一貫してワンストップで手がけている会社が多いが、関東では分業が主流となっている。今の時代、PP 貼りだけ、箔押だけといった単独の加工はなく、加工工程は複雑化している。各社で新たな設備を購入して始めるというのは難しく、協力し合えるところは一緒にやることが、業界全体を発展させる近道になると考える。
 今回の全国大会は、新時代「令和」の第一歩となる大会。私が会長として最後の全国大会となる。関東、関西、中部のネットワークを拡げ、印刷業界への貢献とサービス向上へ、より一層密接な連合体制の構築を呼びかけていきたい。

■全国大会の概要について教えてください。

𠮷田 今回は中部光沢化工紙協同組合(古田敦理事長)が主管となり、三重県・長島温泉「ホテル花水木」を会場に開く。前回大会を上回る50 名を超える参加が予定されている。
 第一部は全国大会式典(14 時~ 14 時30 分)で、大会宣言および大会スローガンが採択される予定である。
 第二部は防災研究の第一人者である名古屋大学教授・減災連携研究センター長の福和伸夫氏に「中小企業におけるBCP 対策について」をテーマに基調講演(14 時45 分~ 16 時)を行う。近年、全国各地で自然災害が増えている中、中小企業としてどのように対応したらいいのかについて興味深い内容となっている。
 第三部は懇親会(18 時~ 20 時)を予定している。翌日は、ナガシマカントリークラブで有志による第2 回全国ゴルフコンペを開く。30 名を超える参加を予定しており、組合員間の懇親を深める。

~仲間同士の連携で新たな市場開拓~

■関東特殊加工協同組合「SEPPA」に名称変更し、3 年目に入りました。特殊加工を取り巻く環境について、どのように捉えていますか。

小原 私が東京都光沢化工紙協同組合(現・関東特殊加工協同組合)の理事長の時に箔押業界に合流を働きかけた当時、箔押業界の方々から「仕事を奪われるのではないか」といった拒否反応が、思いのほか強かった。
 しかし実際、仕事を紹介したり、お互いの加工を組み合わせた場合の相性のテストをしたりと、いろいろな形でプラスの関係が強く築けていると思っている。
 当社は光沢加工の会社だが、仮にお客様から箔押の仕事を受けた場合には、箔押会社にお願いしている。それはむしろ箔押会社の方々がこれまで付き合いのなかったお客様や新たな市場の開拓につながっているのではないだろうか。
 光沢、箔押、スクリーン印刷、トムソン加工など単体でやっていくには難しい時代になってきている。今まで組合に入っていなかった方々は、昔から付き合ってきた数社を知っているだけだと思う。今後はそれだけでは対応し切れなくなってくるだろう。
 組合は、仕事仲間を増やすきっかけになる。そして仲間同士が連携することで、新たな市場を増やしていくチャンスにつながると思う。さまざまな対応ができる体制を取れば、今までとは違った面白い展開ができるのではないだろうか。結果的に、それは本業の光沢加工の地盤強化につながる。

長谷川 組合に参加してみて、今まで交流がなかった人と交流を持てたというのが一番の大きなメリットだ。以前に当社の営業と私で木村理事の会社に見学に行った。そういう機会が生まれたことにしても、組合の意義を感じている。
 また、同じ経営者として悩みなどを話せる人がなかなか周りにいないが、組合の先輩の方々にそうしたお話を聞いたり、先ほどの小原副会長のお話のように、当社の営業が違う分野の仕事を取ってきて分からないことを組合の仲間に相談したりといったこともある。組合に参加しなければ、そういった発想にも至らなかった。
 今後は、光沢加工だけにとらわれず、他分野の方々とも連携、スクラムを組んでやっていくことが大事だと感じている。

 箔押業者の間では、特にこの5年間で、戦前生まれの、いわゆる団塊の世代を中心に廃業が増えている。もともと家族経営の会社が多いので、高齢化が進み、廃業が加速している。
 また、ここ数年来の活版ブームで、昔ながらの活字で箔を押すような名刺などが流行っている。しかし、そういった伝統工芸的な箔押の仕事ができる会社がなくなってしまい、業界内で仕事がたらい回しになっている。また廃業によって仕事があふれ、既存業者で対応し切れない状態になっている。
 今、後加工、特殊加工というのは単体の加工では終わらず、複合的になっている。箱ひとつを見ても、複数の加工が施されている。さらに、加工順序が大きく変わってきている。箔押してからPP貼り、逆にPP貼りしてから箔押など、加工方法は複雑化している。そうした中で、いろいろな加工業者が集まって自由に話し合えて情報交換ができる場所は不可欠になっている。各加工会社が所属する組合は、非常に意義があると思う。

𠮷田 スクリーン印刷は紙やプラスチックなどさまざまな素材に何でも印刷できることから、印刷業界の中では、仕事が割合にあると言われている。工業分野と商業分野があり、当社が専門とする工業分野は苦戦している。今まで多かった家電、パソコン、デジタルカメラなど、自動車以外の物はスマートフォンに集約されてしまっている。
 商業分野に関しては、雑貨、看板、アパレルなどがあるが、デジタル印刷が増えている。たとえば看板は、昔は大きな版を作っていたが、今はインクジェットプリンタに代わっている。デジタル化によって仕事が少なくなっているというのではなくて、むしろ、デジタルを利用して新たな需要を増やしている部分がある。
 スクリーン印刷は、何でも印刷できると話したが、逆に言うと、何でもできないと仕事にならないということがある。そのため、スクリーン印刷ではやらないような光沢や箔押などの仕事も来たりする。その場合は、それぞれの専門の会社にお願いすることが多い。
 お客様は印刷・加工を一つのカテゴリで括るので、どんな要望にも対応できることが大切だ。その点、組合では他の加工分野の人たちとつながりを持つことができる。印刷業界自体が変化し、需要も減っている中で、できるだけ守備範囲を広くすることで、仕事を確保できるということが大事だと思う。これから組合活動を通じて、いろいろな引き出しが持てるよう努めていきたい。

木村 抜き加工も経営環境は厳しさを増している。そのような中でも二極化が進んでおり、しっかりと先を見据えた経営をされている会社は厳しい中でも確実に仕事をされている。一方、抜き加工の業界でも廃業する会社が出ており、先行きの不透明感や後継者不在などで辞め時を考えている会社は多いように思う。
 これから印刷業全体はますます厳しくなっていくと思われるが、その中で会社がどうやって生き残っていくか、伸ばしていけるかは経営者次第かと感じる。
 組合に参加することで、得ることはとても多い。抜き専門でやっていると、特殊印刷や抜き以外の加工をよく分かっていないが、組合でいろいろな情報が得られる。それをお客様にお伝えして役に立てたり、期待に応えることにつながったりしている。これは組合に入っていたからこそできることであり、情報の窓口として活用できている。

~「特殊加工」の下、共に成長発展を~

■加工が複雑化する中で、いろいろな加工会社が集まる組合のメリットは大きいことが分かりました。組合活動をする際の課題はありますか。

長谷川 現在、組合に加入している方が、どうしたらイベントに参加してくれるのか。何かイベントをやっても、だいたい顔ぶれは同じになってしまっている。先立ってのボーリング大会には当社の社員2名を連れていった。普段はない現場同士の交流もあり、大変有意義だった。組合活動への参加者を増やす工夫が必要だと感じている。
 同時に、組合の若返りはテーマの一つではあるが、やはり組合の歴史も重要であり、そういうベテランの方々の力がまだまだ必要であると感じている。

鶴田 紙の上の印刷はどんどん減っていると言われている。われわれ光沢加工業界は出版業界に甘んじて生きてきたので、いろいろなことに疎い部分がある。スクリーン印刷業界などはいろいろな業種に入り込んでいる会社が多いので、そういった情報が入ってきた方がわれわれにとって刺激になる。
 理事のメンバーを見て若い世代も出てきた。みなさんが話されているように、参加すれば必ずメリッ
トを感じることができる。今後も人の交流、仕事の交流の底上げを図っていきたい。

■最後に、今後の自社の展望などについて、どのように考えていますか。

長谷川 ある印刷会社が印刷後にフィルムを貼ったが、剥がれてしまったという。それで当社に表面加工の見学に来たことがある。その時に「こんな紙癖のあるものを貼っているのですか?」と驚かれた。私たちからしたら、当たり前なのだが、そこに気付きがあった。
 やはり私たち表面加工の仕事で暮らしてきた中で、“ 餅は餅屋 ではないが、プロとしてしっかりと当たり前のことができることが大事だと感じた。
 今後も技術の研鑚を積み、表面加工なら誰にも負けないものを目指し、何とかこの厳しい時代を乗り越えていきたい。

木村 先ほどお話したとおり、経営環境としてはとても厳しいが、一方で印刷業界全体では5兆円という市場規模がある。やり方次第ではまだまだやっていけると思っている。実際、自分の会社を見てもまだまだやらなければいけないことがたくさんある。まずはできることから一つひとつ確実に進めていきたい。どうしても足下が気になってしまうが、先を見据えて、お客様のことをしっかりと見てやっていけば、そんなに暗い未来にはならない。そう信じてやっていきたい。

𠮷田 世の中ではAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などが広まっていて、来年あたりからは次世代移動通信の「5G」が市場に出てくる。これからいろいろなものが大きく変わっていくだろう。自動車も自動運転になると、中の装飾もだいぶ変わるだろう。そうした変化の中にスクリーン印刷の
新たな役割も出てくるのではないだろうか。新しい流れに対応できる体制づくりを推進していきたい。国際規格のISO やBCP(事業継続計画)など、品質にこだわった経営に取り組んでいく。
 また、これからは「環境と健康」が大きなキーワードとなる。当社ではスクリーン印刷技術を応用した、従来とは違った新たなカテゴリに挑戦しているところだ。新規分野の開拓を見据えながら、会社の体力を高めていきたいと思っている。

小原 私は、会社は従業員たちが自主的に育てていくものだと考えている。そのため、当社では、「人の育成」に経営の柱を置き、社員教育や、整理・整頓・清掃・清潔・しつけ・安全の「6S 活動」に力を入れている。そうした活動によって人材が少しずつ成長してきており、その中で今までの光沢加工の枠を超えた特殊加工の仕事も、少しずつ形になりつつある。従業員が生き生きと働ける職場をつくることに徹し、将来を信じて地道にやっていきたい。

 当社はここ数年、社員の世代交代が激しかった。若返りが図れた反面、「ロストテクニック」が課題となっている。
 当社は私が3 代目だが、初代は表紙貼り屋だった。布や皮の箔押から製本の加工まで何でもやっていた。2 代目の時に箔押専業に転向し、私もその路線を継いだ。
 これまでの会社の歴史の中で、「失われた技術」というものが結構あるのではないかと最近感じている。そこで、社員にかつて当社でやっていた加工の仕方を再発見してもらうことに取り組んでいる。加工の順序が変わったり、新素材がいろいろ出てきたりすると、紙表紙や布クロスの表紙をやっていた時の箔をダメ元でやってみたら意外にうまく付いたりすることがあったりする。すぐに実を結ぶかどうかは分からないが、何年後かに何かしらの意味が出てくるかもしれないと思っている。そういうかつての忘れてしまったテクニックの探究を始めている。

鶴田 みなさんの話を聞いて、とても前向きに考えていて希望が持てた。
 当社は日本創発グループに入り、グループ各社の相乗効果を発揮しながら事業を展開している。
 先ほど長谷川理事から組合の歴史を学びたいというお話があったが、私はそれほど重視しなくてもいいと考えている。それよりも新しいものをどんどん積み上げていってほしい。過去に縛られて融通が効かない場合は取り払えばいい。これからの若い世代がやりやすい組合にしていきたい。光沢加工だけにとらわれていたら生き残れない。「特殊加工」の名の下、いろいろな人たちが、いろいろな意見を交わし、共に成長し合えるような場にしていくことが一番大事なことだと思う。

|懇話会(ボウリング大会)
  開 催 日:令和元年9月6日(金)
  開催会場:18時30分~ボーリング大会 ラウンドワン池袋店
        :20時00分~懇親会 Palermo(パレルモ)池袋店
  参加人数:30名(懇親会37名)

今年度の懇話会はボーリング大会となり、1ゲーム目は個人戦とし、2、3ゲーム目の団体戦では3名1チームで3人が順番に1 投ずつ投げる*特別ルールが採用された。
 その後、場所を移し、懇親会を開催した。幹事の長谷川太一理事の司会により団体戦、個人戦の表彰式を行ない、鶴田理事長より賞金と賞品が授与された。優勝は団体戦は㈱太陽堂成晃社、個人戦は長谷川広重理事となった。

*【団体戦ルール】3 人が順番に1 投ずつ投げていただきます。例えば、A の人が1 投目を投げ、ストライクでもピンが残ったとしても、次に投げる人はB の人となります。つまりA → B → C → A → B → C の繰り返しで10 フレームまで投げて1 ゲームとし2 ゲームの合計点順位を決めます。